議長挨拶

議長挨拶

神奈川県生コンクリート品質管理監査会議 議長 池田尚治

生コンクリートは現世代のみならず次世代の人間の活動を根底で支える枢要な製品であるため、この製造業務の関係者は他人には判らない緊張感と誇りを無意識のうちに持ちながら仕事に従事しておられることと推測します。勿論、生コンクリートの役割の重要性を認識し、意識的に緊張感を高めて業務を遂行されているのが常であろうことは想像できますが、無意識の緊張感こそ良いコンクリート製造のための本能的なエンジンになっているのではないでしょうか? ところがコンクリートの本質的な役割は製造後から数年、数十年と長く発揮されるので関係者以外では余程熟慮しないと製造の時点ではその重要性が判らないのではないかと思います。良いコンクリートの出荷こそ次世代の福祉に貢献するのです。公共事業か、福祉か、の対立でなく今日の政治家にはポピュリズムよりも熟慮が必要なのだと昨今考えています。
 ところで、良い生コンクリートには品質管理監査会議の果たす役割は極めて大きいと思います。生コンクリートの品質管理監査制度は既に30年以上の歴史を持ちますが、神奈川県地域が独立して監査会議を持つようになったのは1998年(平成10年)からです。我国は欧米諸国と比較して社会基盤や住宅の整備が遅れを取っていたことからコンクリートによる建設工事が華々しく展開され、この監査会議もその役割を大きく果たしてきました。しかしながら世の中の移り変わりは大きく、財政難のもとで福祉の予算が増大し続け、その結果、建設投資が徐々に減少し世界不況と共にコンクリートの需要が大きく減少する状況になってきました。そこへ現政権党の理念として「コンクリートから人へ」という予算配分の方針を打ち出し更に拍車がかけられました。本来、「コンクリートから文化と富が形成され、これによって人に幸せがもたらされる」筈のところを「子供手当て」のように人に直接予算を付けることは経済を失速させ、次世代での発展を期待できません。大不況の時こそ社会基盤に投資をして次世代の発展に備え、結果的に現状の経済をデフレから救うことができるのです。出来るだけ早くこのような政策への転換を望むところです。いずれにしても「コンクリートが次世代の福祉に貢献する」ということを理解してもらわなければなりません。230年前の英国人アダムスミスの「国富論」には社会基盤の重要性とその建設運営について卓見が書かれていますので是非ご一読をお勧めします。岩波文庫として出版されています。
 2008年に発生した溶融スラグ細骨材によるポップアウトの問題ではこの監査会議のもとに対策委員会を設置して検討し、解決に向かったことは関係者一同の献身的なご努力に拠っています。 2009年度には使用セメントの銘柄の不一致問題、また、今年度のセメント計量時の誤作動の問題、など深刻な問題が神奈川県で続けて発生しましたが、これらの事件から学ぶことは極めて多く、今後は組合員の無意識の緊張感と誇りによって神奈川県の生コンクリートの品質への信頼が大いに高まることになると思われます。
 地球温暖化の原因がCO2であるとされてきましたが、この説が誤りである可能性の高いことが認識され始めました。セメント製造時に発生するCO2が温暖化に関係ないとなればコンクリートに対する環境問題が基本的に解決されることとなり、コンクリートは社会の持続可能な発展に大きく寄与できる材料として改めて大きく認識される筈です。セメントの常温硬化という神秘的な結合力で成り立つコンクリートの今後の一層の発展に期待すると共に神奈川県生コンクリートエ業組合の関係各位が今後とも更なる技術的、倫理的研鑽を積まれ、「最も魅力的な社会を建設」するために粛々と貢献されることを切にお願いいたします。

神奈川県生コンクリート品質管理監査会議 議長 池田尚治